構文と表現

主題と焦点

主題はその文がこれから何について話そうとしているかの前提情報です。 焦点はその文がまさに伝えようとしている新情報です。

日本語の格助詞「…は」のように主題を明示する語はなく、 主題と焦点は語順によってそれとなく示します。 主題は文の前に位置しやすく、相対的に焦点は文の後ろに位置しやすいです。 述語(動詞)は本質的に焦点であるため、文末に置くのが普通です。

主題と焦点は疑問文において質問と回答に対応します。 大げさに「一人問答」の形式に言い換えてみると主題と焦点がはっきりします。

なお、定冠詞は既出の情報を示すものであるため、本質的に主題に付きやすく、 したがって文頭に出やすいという傾向があります。

関係代名詞

先行詞は主文の要素、関係詞 quus は従属文の要素。

疑問

問いたい要素を文末に置いて上がり調子で言うことで、疑問になります。 上がり調子は疑問符 « ? » で表記します。

肯定の応答は si、否定の応答は non といいます。

具体的な内容を問うには疑問代名詞、疑問形容詞、疑問副詞を用います。

述語そのものを問うような疑問動詞なるものはありません。 普遍的な動作を表す動詞 facere, agere を使用し、疑問代名詞や疑問副詞を用いて « facere quem »「何を・する」, « agere quomodo » 「どのように・する」 のように言います。

疑問助詞 ne

疑問助詞 « ne » 「…か」は、問いたい要素の直後につけて、問いたい要素であることを明示します。 ne をつければ、問いたい要素を文末に移動する必要はありません。

疑問詞を使う疑問文では疑問詞が問いたい要素であることが明白であるため、 ne はつけません。ne なしに自由な位置で言うことができます。

弱い疑問

疑問文は、疑問を示す (1) 疑問符 « ? », (2) 疑問助詞 « ne », (3) 疑問代名詞・疑問形容詞・疑問副詞 が一つでもあれば成立します。 このうち疑問符 « ? » は回答を期待する意志を明確に示します。 自問したり、疑問の心情を伝えるだけで回答を期待するわけではないというふうに、 弱い疑問を伝えるには、疑問符 « ? » を使わない言い方をします。

否定

否定詞 non は、直後の語を否定します。

否定代名詞や否定形容詞はそれ自体に否定の意味を含むため、否定詞を使いません。

比較

比較級

比較級(より…な)は、語幹に « -ior » をつけて作ります。 元の形容詞が混合型か通性型かに関わらず、比較級-iorは通性型になります。

long-us 長い → long-ior より長い

女性/男性 中性
単数・主格 long-ior long-ior-id
単数・対格 long-ior-em long-ior-id
単数・属格 long-ior-e long-ior-e
複数・主格 long-ior-i long-ior-ia
複数・対格 long-ior-es long-ior-ia
複数・属格 long-ior-is long-ior-is

facil-is 易しい → facil-ior より易しい

女性/男性 中性
単数・主格 facil-ior facil-ior-id
単数・対格 facil-ior-em facil-ior-id
単数・属格 facil-ior-e facil-ior-e
複数・主格 facil-ior-i facil-ior-ia
複数・対格 facil-ior-es facil-ior-ia
複数・属格 facil-ior-is facil-ior-is

比較対象(…よりも)は前置詞 ante で表します。

最上級

最上級(最も…な)は、語幹に « -iximus » をつけて作ります。 元の形容詞が混合型か通性型かに関わらず、最上級-iximusは混合型になります。

long-us 長い → long-iximus 最も長い

女性 男性 中性
単数・主格 long-ixim-a long-ixim-us long-ixim-um
単数・対格 long-ixim-am long-ixim-um long-ixim-um
単数・属格 long-ixim-ae long-ixim-o long-ixim-o
複数・主格 long-ixim-ae long-ixim-i long-ixim-a
複数・対格 long-ixim-as long-ixim-os long-ixim-a
複数・属格 long-ixim-is long-ixim-is long-ixim-is

facil-is 易しい → facil-iximus 最も易しい

女性 男性 中性
単数・主格 facil-ixim-a facil-ixim-us facil-ixim-um
単数・対格 facil-ixim-am facil-ixim-um facil-ixim-um
単数・属格 facil-ixim-ae facil-ixim-o facil-ixim-o
複数・主格 facil-ixim-ae facil-ixim-i facil-ixim-a
複数・対格 facil-ixim-as facil-ixim-os facil-ixim-a
複数・属格 facil-ixim-is facil-ixim-is facil-ixim-is

比較対象(…の中で, …の間で)は前置詞 in や tra で表します。

不規則な比較級・最上級

原級・比較級・最上級が元の形と全く異なる形で対応するものがあります(補充法)。

原級 比較級 最上級
magnus 大きい major より大きい maximus 最も大きい
parvus, minutus 小さい minor より小さい minimus 最も小さい
bonus 良い melior より良い optimus 最も良い
malus 悪い peior より悪い peximus 最も悪い
multus 多い plus より多い plurimus 最も多い

原級比較

原級比較(同じくらい…な)は、 副詞 tam(…ほどに)を添えて、 比較対象(…と同じくらい)を前置詞 come で表すことによって表現します。

副詞の比較

副詞は、形容詞のような比較級・最上級の形をもちません。 比較を表す副詞 plure 「よりいっそう…」、最上を表す副詞 plurimo 「最も…」 を添えることで表現します。

場所・空間の表現

具体的な場所、空間は ad, in, per, ante, sub (sot), super (su) などの前置詞を用いて表します。

下記の慣用的な副詞があります。

時間の表現

年・月・日・時・分・秒の表現

時間

時間(間隔)は数詞で表現する。 量をもつので、2単位以上となる場合は複数形になることに注意。

時刻

時刻(いわゆるタイムスタンプ)は助数詞で表現する。 瞬間の位置をいうので、 ゼロからの距離が2単位以上であっても複数形でいうわけではないことに注意。

相対的な時点

現在を基準とした絶対ー相対表現 (昨日〜今日〜明日 etc.) は、 基準時を « hic … »、 基準時より前を « ultimus … »、 基準時より後を « proximus … » または « secundus … » で表す。

ある時点を基準とした相対ー相対表現 (前日〜当日〜翌日 etc.) は、 基準時を « ille … »、 基準時より前を « praevius … »、 基準時より後を « posterus … » で表す。

今日 hodie, 明日 cras, 昨日 heri

今日・昨日・明日は、慣用的な副詞 hodie, cras, heri をもつ。

これはあくまで副詞であるから、 名詞としては hic dia, ultimus dia, proximus (secundus) dia の形を使うこと。

前 prae, 後 post

基準時前後の副詞表現は、前置詞 « prae … » 「…前に・で」, « post … » 「…後に・で」 を使っても表現できる。

半 semi-

半分は semi- をつける。 semisecundum, semiseptimana は形式としては存在するが実際にはあまり使われない。

secundum 秒 (semisecundum 0.5秒)
minutum 分 semiminutum 30秒
hora 時間 semihora 30分
dia 日 semidia 半日
septimana 週 (semiseptimana 半週)
mensis 月 semimensis 半月
annus 年 semiannus 半年

程度・数量・回数の表現

性質・属性の表現

方式・理由・条件・論理の表現

選択の表現

uter型は二択のみ。三択以上は基本の « quis » 「何」「誰」, « nullus » 「何も(ない)」「誰も(ない)」, « ullus » 「何でも」「誰でも」 を使い、 « quis (tra …) » 「(…のうちの)どれ」, « nullus (tra …) » 「(…のうちの)どれでもない」, « ullus (tra …) » 「(…のうちの)どれも」 などと言う。

あいさつ・その他ひとこと表現