動詞

動詞 (il verbum) は単独で述語となります。 動詞を欠く文は単なる呼びかけや列挙などの特殊な場合に限られます。

動詞の機能は大きく叙法 (il modus) というカテゴリで分類され、 直説法、接続法、条件法、命令法、不定法 があります。 このうち不定法は動詞を名詞的、形容詞的に応用するものになります。

動詞も名詞や形容詞と同じく語尾の変化パターンがあります。 名詞の形態変化を「屈折 (il inflection)」というのに対し、 動詞の形態変化は「活用 (il coniugation)」といいます。

動詞の基本形

活用は数の上では非常に多いですが、きわめて規則的です。 次の3つの基本形から、活用のすべてを規則的に導出することができます。

  1. 不定法・不定詞 (-àre, -ère, -ere, -ìre の4種類)
  2. 直説法・現在・単数・一人称 (-o, -eo, -io の3種類)
  3. 完了受動分詞・中性・単数 (-tum, -sum が多いがぶれがある)

特に、完了受動分詞を除く2つの組み合わせは次の6種類だけになります。

完了受動分詞だけは、おおまかな傾向はあるもののはっきりした対応はないため、 動詞ごとに一つ一つ覚える必要があります。

辞書では、見出しの不定詞に直説法・現在・単数・一人称と完了受動分詞・中性・単数が書き添えられます。

基本動詞

英語のbe動詞に相当する動詞です。 助動詞(il verbum auxiliarem)、繋辞動詞(la copula)ともいいます。 MCは esse と stare の2つがあり、ほとんど意味や用法は同じですが、 微妙な違いがあります。

esse が一般的、恒常的な状態を表すのに対し、 stare は一時的な状態を表します。 また stare は動名詞の属格と組み合わせて進行相を表現する用法があります。

直説法

直説法 (il modus indicativus) はシンプルな言い切りであり、文の述語をなす動詞としての基本です。 動詞は主語(他動詞の文脈では、動作主が相当)の数と人称ごとの形を持ちます。 そのため、強調などの意図がなければしばしば主語は省略してしまいます。

上記 sto, … は現在形です。 他にも過去のことを言ったり未来のことを言ったりする形があります。

直説法現在

èsse
ある
st-àre
ある
hab-ère
持つ
flu-ère
流す
単数・一人称 sum st-o hab-eo flu-o
単数・二人称 es st-as hab-es flu-is
単数・三人称 est st-a hab-e flu-e
複数・一人称 sumus st-amo hab-emo flu-emo
複数・二人称 estis st-ate hab-ete flu-ete
複数・三人称 sunt st-ano hab-eno flu-eno
fàc-ere
作る
dìc-ere
言う
ven-ìre
来る
単数・一人称 fac-io dic-o ven-io
単数・二人称 fac-is dic-is ven-is
単数・三人称 fac-e dic-e ven-e
複数・一人称 fac-emo dic-emo ven-emo
複数・二人称 fac-ete dic-ete ven-ete
複数・三人称 fac-eno dic-eno ven-eno

直説法現在は、疑いない事実や当然のことを素朴に言うものです。

複数・一人称/二人称は長くなるため、アクセントが語尾に移ります。 三人称も同じくらい長いですがアクセントは語幹に残りますから注意してください。

まさに進行中であることを言うには、 進行中の動詞の動名詞・中性・単数・奪格 (supine) を状況補語として、 そのような状況に一時的にあることを示す動詞 stare を述語とします。

現在という名前がついていますが、本質は話者にとって確かである、当然であるという認識です。 必ずしも時間的に現在に限らず、時間に縛られない恒常的な論理や、未来であっても確定度の高い予定は現在形で言います。

直説法単純過去

èsse
ある
st-àre
ある
hab-ère
持つ
flu-ère
流す
単数・一人称 fui st-ai hab-ei flu-ei
単数・二人称 fuis st-ais hab-eis flu-eis
単数・三人称 fuit st-ait hab-eit flu-eit
複数・一人称 fuemo st-iemo hab-iemo flu-iemo
複数・二人称 fuete st-iete hab-iete flu-iete
複数・三人称 fueno st-ieno hab-ieno flu-ieno
fàc-ere
作る
dìc-ere
言う
ven-ìre
来る
単数・一人称 fac-ei dic-ei ven-ei
単数・二人称 fac-eis dic-eis ven-eis
単数・三人称 fac-eit dic-eit ven-eit
複数・一人称 fac-iemo dic-iemo ven-iemo
複数・二人称 fac-iete dic-iete ven-iete
複数・三人称 fac-ieno dic-ieno ven-ieno

単純過去は、過去のできごとを伝えます。 ずっと続いていたことなのか、最終的にどうなったとか、細かい情報は伝えません。 過去にある一つのできごとがあったのだとだけ言う、単純な過去です。

語尾は現在形と似ていますが、複数・三人称のアクセントは現在形と違って語尾に移ります。

直説法継続過去

èsse
ある
st-àre
ある
hab-ère
持つ
flu-ère
流す
単数・一人称 ebo st-abo hab-ebo flu-ebo
単数・二人称 ebas st-abas hab-ebas flu-ebas
単数・三人称 eba st-aba hab-eba flu-eba
複数・一人称 ebamo st-abamo hab-ebamo flu-ebamo
複数・二人称 ebate st-abate hab-ebate flu-ebate
複数・三人称 ebano st-abano hab-ebano flu-ebano
fàc-ere
作る
dìc-ere
言う
ven-ìre
来る
単数・一人称 fac-ebo dic-ebo ven-ebo
単数・二人称 fac-ebas dic-ebas ven-ebas
単数・三人称 fac-eba dic-eba ven-eba
複数・一人称 fac-ebamo dic-ebamo ven-ebamo
複数・二人称 fac-ebate dic-ebate ven-ebate
複数・三人称 fac-ebano dic-ebano ven-ebano

継続過去は、ぼんやりとした幅のある時間の中で状態、動作が淡々と続くさまを表現します。 継続のイメージは、合わせ鏡です。 前を見ても後ろを見ても同じような状態が続いている、同じような動作が繰り返されている、そんな様子を表現します。

直説法単純未来

èsse
ある
st-àre
ある
hab-ère
持つ
flu-ère
流す
単数・一人称 ero st-aro hab-ero flu-ero
単数・二人称 eras st-aras hab-eras flu-eras
単数・三人称 era st-ara hab-era flu-era
複数・一人称 eramo st-aramo hab-eramo flu-eramo
複数・二人称 erate st-arate hab-erate flu-erate
複数・三人称 erano st-arano hab-erano flu-erano
fàc-ere
作る
dìc-ere
言う
ven-ìre
来る
単数・一人称 fac-ero dic-ero ven-ero
単数・二人称 fac-eras dic-eras ven-eras
単数・三人称 fac-era dic-era ven-era
複数・一人称 fac-eramo dic-eramo ven-eramo
複数・二人称 fac-erate dic-erate ven-erate
複数・三人称 fac-erano dic-erano ven-erano

単純未来は、不確実なこと、推測、予想を伝えます。

単純未来の本質は不確実性の含み「〜だろう」であり、 時間的に現在のことでも推測や予想は単純未来で言います。

直説法現在完了

完了とは、ある時点の前にあったできごとの結果として、ある時点でどうなったか、を伝えます。 過去にあったできごとに対する現在の結果を述べるには、現在完了を使います。

<完了受動分詞> + <助動詞・直接法現在>

現代ロマンス諸語と同様に、標準MCは完了受動分詞と助動詞を組み合わせて完了を表現します。 他動詞の文脈では直接目的語にかかる完了受動分詞と主語に対応する助動詞 habere を組み合わせます。 自動詞の文脈では主語にかかる完了受動分詞と主語に対応する助動詞 estere を組み合わせます。

habere の人称は主格項に一致しますが、 もはや「<主格項>が持っている」という意味は失っており、 時制についてはどちらかというと対格項の状況に対応します。

古風な文脈では、単純過去形が現在完了の意味を表す場合があります。 これは単純過去形が古典ラテン語の現在完了形に由来するからです。

標準的には、この用法はありません。完了は完了受動分詞と助動詞の複合で表します。

直説法前過去

<完了受動分詞> + <助動詞・直接法単純過去>

直説法前過去は、単純過去に対応する完了です。 過去の時点で完了していたことを伝え、結果の様子が単純過去のニュアンスをもちます。

直説法大過去

<完了受動分詞> + <助動詞・直接法継続過去>

直説法前過去は、継続過去に対応する完了です。 過去の時点で完了していたことを伝え、結果の様子が継続過去のニュアンスをもちます。

直説法前未来

<完了受動分詞> + <助動詞・直接法単純未来>

直説法前過去は、単純未来に対応する完了です。 未来の時点で完了しているであろうことを伝えます。

接続法

接続法 (il modus subjunctivus) は、話者が素朴に思い浮かべる主観的な想像、考えを直説法のように「こうだ」「こうらしい」などと言い切らずに「そのようなこと」までで留めるものです。 したがって、接続法は元来従属的であり、最終的には直説法に接続 (subjungere)、つまり「そのようなこと→がどうだ」まで言ってようやく文が完成するので、接続法の名があります。

基本的には、実際にどうなのかはさておき、話者の主観的な推測、疑い、願望などの内容を接続法で言い、 そのようなことを私は考えているとか、疑っているとか、願っているとかの主節を直説法で言う、という構成をとります。 文と文を接続するので、関係代名詞を使います。 ある意味慎重で回りくどい言い方なので、暗に「あくまで私の感想ですが……」「個人的には……」「知らんけど……」のような態度をチラつかせます。

しかしながら従属節、すなわち接続法で言う内容だけでおおむね意図が伝わるため、 実際には接続先の主節、すなわち直説法で言う内容は省略してしまうことが多いです。 ぱっと見では接続法だけで文が完結しているように見えます。

接続法現在

èsse
ある
st-àre
ある
hab-ère
持つ
flu-ère
流す
単数・一人称 sim st-e hab-ea flu-ea
単数・二人称 sis st-es hab-eas flu-eas
単数・三人称 sit st-i hab-i flu-i
複数・一人称 simus st-emo hab-eamo flu-eamo
複数・二人称 sitis st-ete hab-eate flu-eate
複数・三人称 sint st-eno hab-eano flu-eano
fàc-ere
作る
dìc-ere
言う
ven-ìre
来る
単数・一人称 fac-ia dic-a ven-ia
単数・二人称 fac-ias dic-as ven-ias
単数・三人称 fac-i dic-i ven-i
複数・一人称 fac-iemo dic-amo ven-iamo
複数・二人称 fac-iete dic-ate ven-iate
複数・三人称 fac-ieno dic-ano ven-iano

接続法現在は、現在においてその時のことをいう場合、過去において相対的に未来のことをいう場合に使います。

現在において未来のことをいう場合は、直説法未来が推測のニュアンスを含むため、これを使います。 接続法未来はありません。

接続法継続過去

èsse
ある
st-àre
ある
hab-ère
持つ
flu-ère
流す
単数・一人称 sim st-asse hab-esse flu-esse
単数・二人称 sis st-asses hab-esses flu-esses
単数・三人称 sit st-assi hab-essi flu-essi
複数・一人称 simus st-assemo hab-essemo flu-essemo
複数・二人称 sitis st-assete hab-essete flu-essete
複数・三人称 sint st-asseno hab-esseno flu-esseno
fàc-ere
作る
dìc-ere
言う
ven-ìre
来る
単数・一人称 fac-esse dic-esse ven-isse
単数・二人称 fac-esses dic-esses ven-isses
単数・三人称 fac-essi dic-essi ven-issi
複数・一人称 fac-essemo dic-essemo ven-issemo
複数・二人称 fac-essete dic-essete ven-issete
複数・三人称 fac-esseno dic-esseno ven-isseno

接続法継続過去は、過去においてその時のことをいう場合に使います。

接続法過去

<完了受動分詞> + <助動詞・接続法現在>

接続法過去は、現在において過去のことをいう場合に使います。

接続法大過去

<完了受動分詞> + <助動詞・接続法継続過去>

接続法第過去は、過去において相対的に更に過去のことを言う場合に使います。

条件法

条件法 (il modus conditionalis) は、ある仮定に対する帰結を述べるものです。 単に条件と帰結の論理的関係を述べるだけなら直説法で言いますが、 条件法は現実の状況に照らして、それに対立するような条件〜帰結をあえて提示します。

名前のせいで紛らわしいですが、条件法を適用するのは条件節「こうだったら」の方ではなく、帰結節「こうなのだが」の方です。

条件法現在

èsse
ある
st-àre
ある
hab-ère
持つ
flu-ère
流す
単数・一人称 erei st-arei hab-erei flu-erei
単数・二人称 ereis st-areis hab-ereis flu-ereis
単数・三人称 ereit st-areit hab-ereit flu-ereit
複数・一人称 eriemo st-ariemo hab-eriemo flu-eriemo
複数・二人称 eriete st-ariete hab-eriete flu-eriete
複数・三人称 erieno st-arieno hab-erieno flu-erieno
fàc-ere
作る
dìc-ere
言う
ven-ìre
来る
単数・一人称 fac-erei dic-erei ven-erei
単数・二人称 fac-ereis dic-ereis ven-ereis
単数・三人称 fac-ereit dic-ereit ven-ereit
複数・一人称 fac-eriemo dic-eriemo ven-eriemo
複数・二人称 fac-eriete dic-eriete ven-eriete
複数・三人称 fac-erieno dic-erieno ven-erieno

条件法現在は、結果はまだ決まったわけではないものの、 おおよそ予想される結果に対立する条件と帰結「こうだったら→こうなのだが」を述べます。

条件法現在の形は、直説法単純未来と直説法継続過去を融合させたようです。

条件法過去

<完了受動分詞> + <助動詞・条件法現在>

すでに帰結が確定してしまった後で、後出しジャンケンのようにそうならなかった場合のifを言う場合は、条件法過去「〜だったろうにな」を使います。 条件節も今となっては「無い前提」を言うことになるので、現在完了「〜だったとしたら」を使います。

命令法

命令法 (il modus imperativus) は、命令や呼びかけを行うのに使います。 相手を明示する場合はたいてい呼格を使用することになります。 呼格が主格で代用可能なのと同じように命令法も直説法で代用が可能であり、 使用場面が限られていることもあっておまけ的な叙法となっています。

èsse
ある
st-àre
ある
hab-ère
持つ
flu-ère
流す
単数・二人称 es st-a hab-e flu-i
複数・二人称 este st-ate hab-ete flu-ete
fàc-ere
作る
dìc-ere
言う
ven-ìre
来る
単数・二人称 fac-i dic-i ven-i
複数・二人称 fac-ete dic-ete ven-ete

命令法はその性質上、現在形・二人称のみです。 単数は直説法現在の -as, -es, -is からsを取った -a, -e, -i で、 複数は直説法現在と同形です。

不定法

不定法 (il modus infinitus) は、 直説法や接続法、条件法のように主語の数・人称で活用されて文の述語となる定形 (la forma finita) に対して、 述語とはならずに形容詞的、名詞的、副詞的にふるまう、動詞の派生的、副次的な機能です。

不定詞

不定詞 (il infinitivus) は、単に動詞の意味「〜するということ」をそのまま表すだけの語です。 動詞1語に1つの形で、その語尾4種 -are, -ere, -ere, -ire がそのまま定形の活用パターンの分類となるため、 動詞を辞書的に記載する際の基本形となっています。

不定詞はそのまま名詞的に使ったり、 potere 〜できる, volere 〜したい などの準助動詞に組み合わせて使います。 そのまま名詞的に使う際は形容詞の名詞化のように定冠詞を伴うことも多いですが、なくても構いません。

不定詞による従属節は、目的語を連れることができません。 そのようなリッチな従属節を従えたい場合は、関係代名詞を使います。

不定詞は目的語を連れることはできませんが、(主節の主語と異なる)主語だけは連れることができます。 ただし、直感に反するかもしれませんが、この不定詞の意味上の主語は対格で表します。 これを対格不定詞といいます。

対格項が意味上の主語を担当するので、意味上の直接目的語を示すことはできません。 そのような場合には代わりに動形容詞を使った表現が可能ですが、古風な言い回しとされ積極的には用いられません。 直接目的語を示したい場合を含め、項をいくつかとるような複雑な従属文になる場合は、 関係詞を使います。

能動分詞

能動分詞 (il participium praesentis) は、動詞の不定法の末尾 -re を -ns に交換することで作ります。 形容詞的な語になるため、数・格で屈折します。 E通性型の屈折パターンですから、性については女性/男性で同形となります。

st-àre
ある
女性/男性 中性
単数・主格 stans stans
単数・対格 stant-em stans
単数・属格 stant-e stant-e
複数・主格 stant-i stant-ia
複数・対格 stant-es stant-ia
複数・属格 stant-is stant-is

能動分詞は「〜する…」のように、能動的な意味で名詞を修飾します。

能動分詞は基本的にそれ1語だけで使います。 目的語やその他状況補語を連れることはまれで、 そのような文を組みたい場合は動形容詞を使うか、 最終手段としては関係代名詞を使います。

冠詞をつけて名詞化することで「…するもの、人」を表します。 もはや冠詞を伴うことなく独立した名詞になっているものも多いです。

完了受動分詞

完了受動分詞 (il participium perfectum) は、 はっきりした規則がありませんが、おおむね -tus, -sus の語尾を持ちます。 形容詞的な語になるため、数・格・性で屈折します。 A・O混合型の屈折パターンですから、女性/男性/中性で異なる形となります。

st-àre
ある
女性 男性 中性
単数・主格 stata status statum
単数・対格 statam statum statum
単数・属格 statae stato stato
複数・主格 statae stati stata
複数・対格 statas statos stata
複数・属格 statis statis statis

完了受動分詞は「〜された…」のように、受動的・完了的な意味で名詞を修飾します。

完了受動分詞も現在分詞と同様、名詞化して「…されたもの、人」を表します。

また、完了受動分詞は助動詞と組み合わせて完了時制を構成します。 古典ラテン語は独自の完了形を持っていましたが、 現代ロマンス諸語と標準MCではこの複合形が取って代わりました。 完了形はのちに単純過去になります。

動名詞

動名詞 (il gerundium) は、動詞の不定法の末尾 -re を -ndum に交換することで作ります。 O型中性名詞的な語になり、数・格で屈折します。

st-àre
ある
中性
単数・主格 standum
単数・対格 standum
単数・属格 stando
複数・主格 standa
複数・対格 standa
複数・属格 standis

そのままで中性・単数の名詞として扱います。 定冠詞を伴うことも多いです。

属格は様々な副詞句の働きをします。 前置詞なしにざっくりと状況を表しますが、 前置詞を伴って意味をはっきりさせることもよくあります。

特に、 stare, andare, venire のような基本動詞に動名詞を組み合わせると、 動作や事態が進行、漸進しているさまを表します。

未完了受動分詞[ARC]

未完了受動分詞 (il gerundivus) は、動詞の不定法の末尾 -re を -ndus に交換することで作ります。 形容詞的な語になるため、数・格・性で屈折します。 A・O混合型の屈折パターンですから、女性/男性/中性で異なる形となります。 中性は動名詞と同じ形になります。

st-àre
ある
女性 男性 中性
単数・主格 standa standus standum
単数・対格 standam standum standum
単数・属格 standae stando stando
複数・主格 standae standi standa
複数・対格 standas standos standa
複数・属格 standis standis standis

未完了受動分詞は他動詞の文脈でのみ用い、直接目的語にかかって 「…されゆく…」「…されることになっている…」「…されるべき…」の意味を表します。 しかしながら、結果的には文中の直接目的語と未完了受動分詞の役割が逆転した論理構成として解釈されます。

この文章は、不定詞では作れません。 なぜなら不定詞による従属文では、対格項が主語を表してしまい、直接目的語を表すことができないからです。 他動詞の文脈で不定法の従属文を構成したい場合に、この未完了受動分詞を使った構文を使うことができます。 しかしながら先に見たように未完了受動分詞を使った表現は論理的に飛躍している面があるため、 詩的・古風な言い回しとされ、通常は代わりに関係詞を使います。

受動態

受動態は、他動詞の文脈における目的語が主語に回った視点になります。 完了受動分詞 + esse または stare で作ります。 完了受動分詞は主語に合わせて屈折します。

現代ロマンス語と異なり、 MCでは間接目的語(与格項)も主語に回して受動態を作ることができます。


前置詞

前置詞は名詞の斜格 (il casus oblibuus、主格以外の格) に組み合わせて、さまざまに意味を派生するものです。 もともとは副詞で、動詞と斜格名詞に添えて追加の意味づけをするものであり、 その動詞・名詞との関係性が固定化したものです。

ad, a[VLG]

対格、属格に組み合わせて、地点、時点を表します。 属格はその地点、時点にあること「〜で」「〜において」、 対格はその地点、時点へ向かうこと「〜へ」を表します。

口語形 a があり、積極的に使って構いません。 ただし、あとに先頭に母音のある名詞が続くと母音が連続してしまい発音しづらくなるため、 これような場合には標準形 ad を持ち出すことを推奨します。

ad は定冠詞との縮約形を持ちます。

ad + 対格 の与格

ad は、対格に組み合わせて与格として機能します。

apud

対格、属格に組み合わせて「〜のもと(、家、施設、環境、…)に/で」の意味を表します。

contra, ante

対格、属格に組み合わせて、向かい合っていることを表します。

cum

属格に組み合わせて、手段を表します。

de

属格に組み合わせて、所属・所有を表します。 本来は属格単独で表せていましたが、標準MCでは de を付けてこの意味を鮮明にすることを推奨しています。

また、de + 属格は由来「〜から」「〜でできた」を表します。

その他、転じて話題「〜について」を表します。

in

対格、属格に組み合わせて、ある範囲の中、内部、内側を表します。

in は定冠詞との縮約形を持ちます。

pro

対格に組み合わせて目的「〜のために」「〜に向かって」を表します。

per, via

属格に組み合わせて経由「〜を通って」「〜を通じて」を表します。

転じて、受け身の文脈における動作主「〜によって」を表します。

per は、一定間隔の分割「〜ごとに」「〜毎に」を表します。

sine

属格に組み合わせて、不所持「〜なしで」を表します。

sub, sot[VLG]

対格、属格に組み合わせて、下方「〜の下へ/に」を表します。

sub, sot は定冠詞との縮約形を持ちます。

stare sub <動名詞の属格> で、そのような状況下にあることを表します。 これは受け身的な進行相を表現します。

super, su[VLG]

対格、属格に組み合わせて、上方「〜の上へ/に」を表します。

super, su は定冠詞との縮約形を持ちます。

intra, tra[VLG]

対格、属格に組み合わせて、間「〜の間へ/に」を表します。

その他の前置詞


その他の文の要素

副詞

副詞は動詞・形容詞、あるいは他の副詞・文そのものを修飾します。 前置詞句や慣用的なフレーズなども副詞的な要素といえるため挙げればキリがありませんが、 形容詞から副詞への派生にある程度の規則があります。

A・O混合型形容詞からは、その女性・単数・主格に -mente をつけて副詞を派生します。

E通性型形容詞からは、その語幹に -iter をつけて副詞を派生します。